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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
にゆらいでいるだけだった。
けれど。
一歩外の廻廊から広庭にかけては、夜も蒸れるばかり無数の人影が真っ黒につめ合っていた。しかも、ひっそりと、堂内の法力の試しを見物していた。一山の僧も稚子までも、固唾をのんで、この宵は、すべてそこに集まりきっていた。
呪り殺し、呪り生かし――のこの行事、毎年やる事ではあったが、それでも毎年、法力の摩訶不思議に、群集は酔ったように眼をすえていた。
呪りにかかっている荒法師は、法衣のたもとを背に結びあげ、念珠を押しもんで、今や天狗がのりうつッたように、読経の喉を嗄らし、印を切って、何やら声荒らかに、呪り殺しをうける俗の男を叱咤していた。
すると。
――ぎゃッっ
生きた鷲の股でも裂いたような叫びがした。
その男ではない。
印を切った法師でもない。
異様な声のした方角は、正にこの毘沙門堂の屋根か――いや、もっと離れた裏山の峰道かと思われる遠くであった。
「ア……?」
「……おや?」
せっかく、天狗がのりうつって来かけた法師も、法力に酔わされていた男も、眼が醒めたように、きょとんと、眸をうごかした。
――と思うと、
だだだだッと、堂のすぐうしろ辺りで、峰道から人の足音が雪崩れて来た。