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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

月の四の日ごとに、市が立つので、そう称ばれていた。三郎盛綱は、今日がその日にあたるのを思い出したのである。

穀物、獣皮、漆、織物などあらゆる物と物が交易されていた。馬市も立っている。鹿毛、栗、月毛、黒などが何十頭も馬繋ぎに首をならべていた。

その中に、一頭、鼻すじの白い黒鹿毛がいた。鞍もあぶみも外してあるので、ちょっと見違えるが、盛綱の眼が見あやまるわけはなかった。

「あっ、龍胆だっ」

手をかけると、ひとりの伯楽が飛んで来て、いきなり咎めた。

「何をなさる」

「何をって。おまえのか」

「きょうの市で、大金を出して求めた馬じゃ」

「それは気の毒なことをした。これはわしのご主人の持馬だ」

「何だと」

「そちは誰から買った」

「誰やら知らぬが、売りに来た若者が、市へ出したので買うたまでじゃ」

「その若者は鬼藤次といいはせぬか」

「名など知らぬが、あれ、あの彼方に見える筵掛の小屋の中で、市の商人や馬買いたちの仲間に交じって、博奕しておるわ」

「さては」

と、うなずいて、

「では、この駒は、しばらくそちに預けておこう。だが、ここから動かしたら承知せぬぞ」

盛綱は、そう固く云いおいて、筵小屋の方へ歩いて行き、そっと中を覗いてみた。