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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
定綱は、ひとり呟いた。
「何が」
と盛綱は、兄の憂鬱に眼を尖らす。その眼を、定綱はじっと見返して、
「そちは、そのように、暢気者だから、文使いなどには、ちょうどよいのだ。この定綱へ、行けと仰っしゃった事はない」
「兄者人。ひがんでいるのか」
「ばかを申せ」
「わしは暢気者かなあ」
「憂いがないゆえ」
「憂いたって仕方がない。――あれでいいのかしら? とはわしも時々考えるが」
「そちでさえ、そう思うのか」
「思わぬ事はない」
「父上は、わしら兄弟を、とんだお方へご奉公につけてくれたものだ。畏れ多いが、時々、嘆息が出る」
「源家に運がなく、平家の運がいいのだ。ぜひもない」
「盛綱、わしらふたりの配所奉公も、はや十年の余だぞ。諦めきれるか。わしは諦めきれない。……一度、兄弟して、ご意見してみようではないか。あのお方の、本心をたたいてみようではないか」
「意見って。何を」
「前には、伊東祐親入道のむすめとあのような事件を起し、それには、さしもお懲り遊ばしたろうと思っていると、亀の前をいつか配所へお入れあった。――それもいい。ところがまたもやだ。何の科もない亀の前を、ちょっとのお怒りで、里方へ帰しておしまいになった上、この夏頃から、しばらく絶えていた北条殿の息女へ、しきりと文使いの取り遣り。