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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

「白髪を蓄えておるよりも剃り下ろしたほうがきれいである。厳しゅう衣冠して窮屈にいるよりも、老いの身には日常も法衣のほうが手軽くて便宜である」

と、いうのである。

しかし彼の抹香嫌いは、仏法の根本原理に異論があるわけでも何でもない。彼の眼に耳にして来た今の仏者の形に対しての反感だった。若い頃から頑固に抱いていたそれが、老いてもなお、強くこびりついているのであった。

(――世に入道相国の御意のままにならぬ事は一つもあるまい)

と、世上の人々は云っているそうだが、入道自身の身になると、

(――世に自分の思う事は一つだに思うように行っていない)

と、嘆じたいほどだった。

山と寺がその一例である。叡山と三井寺にかたまっている僧徒の勢力である。彼は明雲僧正などを巧みにあやなして、表面そこをも事なく抱擁して見せてはいるが、実は事ごとに、腹の虫をころしているので治まっているだけだった。

入道が、入道としての、面目を発すれば、彼等の伽藍堂塔は一夕に焼きつくして、一物の金泥や金襴も残さない焼け跡の灰の中に、

(これがほんとの仏だ)

と、たった一つの阿弥陀如来をすえて見せたら、さぞ胸がすくであろうと常に思っているほど、その勢力と扮装に、内心唾棄したいほどのものを抱いているのだった。