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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

と、胸に念じた。

「重忠、重忠。――陸からでは手ぬるい。あれまで射手をすすめて、敵の足掻きせぬまで、射て射て、圧倒してしまえ」

矢風の中からいう彼の声は、自分も身を挺して、すでに敵前で戦っているような悲調とあらい語気をおびていた。

「抜かりましたっ」

畠山重忠は、そう云われて、初めて味方の掩護が、まだ手ぬるいものであった事に気がついた。

「橋桁へ立て。あれなる橋桁の上を進んで近々と射よ」

と、自分の隊へ、大声で命じながら、手を打振った。

すると、熊谷直実の部隊も、渋谷右馬允の隊も、平山武者所の手の者も、いっせいに弓を持ったまま、橋板のない橋桁の上を、先を争って駈けて行った。

弦音をそろえて、そこから対岸の敵へ、猛烈に射返した。

そこからの掩護は的確にききめがあった。たちまち、敵の矢数は減って来た。飛んでくる矢にも最初ほどな弓勢はなくなった。

河中の兵たちは、ほとんど、目的を達して、瀬や淵の水深まで測ったうえ、紫いろの顔をして、やがて続々陸へ這いあがって来た。

三

その機に、対岸でも、布陣を革めているらしく、しきりに兵馬の移動がながめられたが、やがての事、前にもまして弓勢が、河面も晦くなるばかり箭を射かけて来た。