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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

「――ちと、無謀だ」

と云いたげな色が、そのせつな諸将の顔にうごいたが、義経の眉を仰ぐと、なぜか諫止することも、それを敢行するだけの成算があるのかないのか、細い事なども、訊ね出せない気もちに打たれてしまった。

それは義経の面に、すでに死を決していることが、明らかに見られたからであった。

――成らねば死ぬまで。

鎌倉武士の心はそこへ飛躍すると華やかなここちになる。理はすてて、信念の究極へ、一気に行ってしまうのである。

それまでは、各※(二の字点、1-2-22)理念にも惑ってみるが、智も働かしてみるが、死という点に到ると、もう途中の妄智や煩雑な是非はもたない。

さわやかに、潔く、そして誰もみなかいがいしくなる。笑い声のうちに行動へかかる。

「蒲殿が東門へ寄するも、あすの夜明けを期してかかろう。――それにおくるるな。呼応して、明け方までに、西の城戸へおめき寄せよ。義経も、播磨の海の彼方に、陽の昇りきらぬまに、かならず敵のまっただ中に駈け入っておろうぞ」

別れにのぞんで馬上から彼はもう一度こう本軍を励ました。

実平について須磨へ下った本軍のほうはおよそ六百余騎、――義経の手について、そこからなおも、山また山の道もない闇へ分け入って行った数は、七、八十騎にすぎなかった。