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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁
つよく乗った後では、こうして馬の脛を冷やしてやるのがよいのだった。馬場から帰る人々が、そのためよくここへ廻るので、この辺の土民は、「馬冷し池」などと称んでいる。
一頃は、この池も、源氏の武士と馬で賑わっていた頃もある。宗清は、ふと手をさし伸べ、池に臨んで咲いている梅の一枝を、花を落さぬように、そっと手折った。
「藤三、後から曳いて、厩へ入れておけよ。――先へ参るほどに」
宗清は、徒歩であるき出した。彼の主人、尾張守頼盛のやしきは、遠からぬ所にあった。頼盛は地方官として、常に尾張に在国している。――でほとんどそこは、空屋敷のていであった。
――にも拘らず、先頃からそこの門は、表にも裏にも、物の具着けた兵が十人くらいずつ立っている。あたりの閑寂に似もやらぬ厳しさである。素槍のどぎどぎした光が、時をおいては、土塀の外を三、四人して巡っているのに、屋敷の中は寺のように森閑として、鶯が啼きぬいている。
「何も、変りはないか」
宗清は、門衛の兵に訊く。
「ありません」
兵の答えにうなずいて、宗清はずっと通って行った。中門にも、兵が屯していた。
「お帰りなされませ」