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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「?」
「大夕立に叩かれて、曲者の身体は人魚のように綺麗だったそうですよ、――もっとも、湯もじ一つだけは締めていたが――」
「小唄の師匠のお組が下手人だという積りか、お前は?」
「外にお園を殺しそうな人間は無いじゃありませんか、――お組の家を捜しても、濡れた着物は無かった筈で――裸体でやったんですもの。三十になったばかりの脂の乗り切った良い年増が、大夕立の中を、素っ裸体で屋根を渡り――口にこう匕首なんかくわえて、怨み重なる女を殺しに来るなんて図は、たまりませんね、親分」
八五郎は自分の首筋を撫でたり、肩を縮めたり、膝を叩いたりするのです。
「誰がそんな事を言ったんだ」
「もっぱら世上の噂ですよ」
「町内の人が皆んな口を開いて眺めていたわけじゃあるめえ、お前は口留めされたんだろう」
平次は早くも八五郎にこの話を吹込んだもののことを考えて居る様子です。
「お菊が向うの唐物屋の店先で、それを見て居たんですよ」
「お菊が?」
「此家の前で、親分に話そうとしたが、奥にお組が居るから――私は怖い――とか何んとか言って、口を緘んでしまったでしょう」
「フーム」
「それを、娘の心の中に畳み兼ねて、昨日うっかり人に話してしまい、それがお組の耳に入って、昨夜この路地で殺されたんでしょう」