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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
三
突んのめして抱き付いてもいいし、後ろから肩を叩いてもいい、兎も角良い匂いをさせている奴を捜すんだ」
「女にやっても構やしませんか」
「いいとも」
「有難え、天下御免で、あの娘に噛り付いて見せますよ」
「天下御免という奴があるものか、手荒なことをするな」
「ところで親分は?」
「一寸外へ行って来るよ」
三
平次が行った先は、練塀小路の油屋、和泉屋嘉七の店でした。
「若旦那に逢い度いが」
というと、主人の嘉七が、
「倅は大病で、どなたにお目に掛りませんが――」
というのを振り切って、無理に嘉三郎の病間へ通ると、奥の四畳半に寝て居た嘉三郎は、
「あ、銭形の親分か」
と予期したことでもあるように、あわてて床の上に起直ります。年の頃二十一、二少々馬面で、丈夫で、そのくせ意志が弱そうで疳が強そうで、どう見ても恋患いなどをしそうもない人柄です。
「気の毒だがお前さんに、今日は八丁堀まで行って貰わなきゃならねえ。江島屋のお艶のことで、人が二人まで殺されたことは知っているだろう。恋患いの仲間を、一人々々調べることになったんだ」
「親分、私はこの通りの病人で、一と足も外へ出られませんが」
嘉三郎は手を合せて拝まないばかり。