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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
五
」
「――」
振り返るとお比奈は、相変らず言葉少なに、そして淋しそうにうなずいて居ります。
「そいつは良い事に気が付いてくれた、甥の八五郎より、立派な御用聞になれるぜ叔母さん」
「まア、それ程でも無いでしょうよ」
などと、叔母さんは満更でもない様子です。
「ところで、それからどうしたんです、叔母さん」
「何時までもそうして居るわけに行かないから、お比奈さんと二人で押入の戸を蹴飛ばして転げ出ると、御近所の衆を起して兎も角も縄を解いてもらいました。別段怪我も無いし、お比奈さんの可愛らしい頬が、火ぶくれになったわけでも無いから、そのまま八五郎が帰るのを待ちましたが、この子と来たら、御存じの通りの呑気者でしょう」
叔母さんの鋭鋒は、いつもの通り八五郎の方に向いて行くのです。
五
平次は時を移さず、八五郎を新鳥越の越中屋金六の家へ走らせ、お比奈の兄の山之助に急を告げました。――もっとも事件は大したことも無かったので、忙しかったら来なくてもいいという条件付です。八五郎が帰って来ての報告は、
「山之助は胆を潰して居りましたが、昼は前々から人でも頼まないと、店をあけられないから、よろしくお願してくれということでした」