Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens

Aozora Bunko

【第三回】

一

「すると、この仮名書の手紙――犬くぐりから忍べ――とは書かなかったわけで?」

「こんな失礼なことを、書くわけはございません」

お艶は必死と抗弁するのです。涙は漸く乾きましたが、銀の粉を吹いたように薄桃色の頬が、不思議に涙に洗われながら、溶けて流れもせずに、反って新しい光沢と、美しい色調を持ったのは、何んという美女の奇蹟でしょう。

「その手紙は、下女のお六が取次ぐのでしょうな」

「――」

お艶はうなずきました。

「八、其処に居るなら、ちょいと下女のお六を呼んでくれ」

平次は庭のあたりに、ウロ/\して居る八五郎に声を掛けました。

「あっしも先刻からあの女を捜して居ますが、何処にも見えませんよ」

「何んだと?」

平次は縁側に飛出しました。

「荷物もそのままだし、三十両という大金は主人に預けてあるというから、逃げも隠れもする筈はありませんがね」

八五郎の言葉の裏には、何やら重大なものが匂うのでした。

【第三回】

一

江島屋の下女お六の行方不明は、事件を急角度に展開させました。

「八、お前一人では手が廻るまいが朝っから誰も外へ出た者は無いか、外から来た者は無いか、第一番にそれを調べるんだ、一人も出入りした者が無きゃ、下女のお六は此家の何処かに居るに違いない」