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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens

Aozora Bunko

二

のも、わびしく哀れな姿です。

「お膳はこう三つ、主人は此処で、お客様お二人は此処でございました。銚子は引込めて、盆の上に徳利が二本、それが出た時は、私も芸子達も、皆んな次の間へ追いやられました」

内儀お染――薄墨大夫の説明はなか/\行届きます。

二本出した徳利、一本には毒、一本には霊薬が入って居る筈のが、二本共毒であったのでは、其処に種も仕掛けもある筈は無く、お染の説明はどんなに念入でも、銭形平次の調べの役には立ちそうもありません。

「その最後の酒の席に、誰も入って来た者は無かったのかな」

「誰も入る筈はございません」

「酌は?」

「二人の芸子に任せました。私がいましては、大井様に当てつけがましいと存じまして」

「お燗番は?」

「お勝手に任せましたが」

お染の答は何んの淀みもなく、平次にしても、これ以上立入って訊くこともありません。

二

「親分、五丁目の杏斎先生が、お話をし度いことがあるとかで、下で待って居りますが」

八五郎がそう言って来たのをきっかけに、平次はこの美しい女房の囚から解放されて、階下の一と間に案内されました。

「これは、銭形の親分、忙がしいところを気の毒だが、少しお耳に入れて置き度いことがあってな」