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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
【第三回】
一
【第三回】
一
無事な日は五日、七日と過ぎました。
大井久我之助と、吾妻屋永左衛門を、一ぺんに殺した毒酒の秘密もまだわからず、吾妻屋の手代佐太郎を、石で叩き殺した下手人の見当もつかぬうちに、お月様は一と晩毎に痩せて、江戸の街もやがて悪魔の跳梁に都合の良い、闇夜続きになって行きます。
「親分、今日は、良い日和ですぜ、ちょいと遊びに出ちゃどうです、ジッとして煙草ばかり吸って居るのは、身体のために毒ですよ」
などと、一とかどの事を言いながら、子分の八五郎は幾日目かの顔を見せました。
「遊びに行くほどのお小遣でもあるかえ、大層機嫌が良いようだが」
平次は悠然として、日向のとぐろをほぐそうともしません。
「御存じの通りで、金には縁がありませんよ、もっとも女の子には持て過ぎて困るんだが」
そう言って長んがい顎を撫で廻す八五郎です。
「ヘェー、大層なことになるものだね、世並が悪いわけだ」
「そう馬鹿にしたものじゃありませんよ」
「相手は何処のおん婆さんだえ」
「そんなイヤな代物じゃ無いんで、ヘッ、入山形の二つ星、眉は落したが、お灯明をあげ度え位の代物で――」
「吾妻屋の後家じゃ無いのか、あれは止せよ八、下手なちょっかいを出すと、飛んだ恥を掻くぜ、第一お前にはお職過ぎて、お染八五郎じゃ床に乗らねえ」