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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「そんな事だろうと思った――おや、お園の家へ小三郎が来て居るようだ、お前は外で待って居てくれ、いいか」
平次は何やら八五郎に囁くと、それを路地の外へ出してやり、自分の手で木戸を閉めて、さて、お園の家へ外から声を掛けるのでした。
「小三郎兄哥ちょいと来てくれ、見て貰い度いものがあるんだが」
「へえ? 銭形の親分ですか、ちょいと待って下さい」
小三郎は殊勝らしく仏様の前で線香などを上げて居りましたが、麻裏を突っかけて気軽にヒョイと顔を出しました。
「小三郎兄哥、お組の家の屋根は、すっかり腐っていて、人間は歩けそうも無いぜ」
「えッ?」
「お園を殺した下手人を、向うの唐物屋の店先からお菊が見ていた、――それを俺に教えようとしたとき、俺の側に居て眼顔で留めたのは、小三郎兄哥、――お前じゃなかったのか」
「――」
「お園の死骸の股にある血の手形は、まだ拭き取っていない筈だ、お前の手と比べて見ようか」
「親分、そんな事が、と、飛んでもない」
「お前がお通夜の席から帰ったのは亥刻前で、佐竹の賭場へ行ったのは亥刻半だ、その半刻の間、お前は路地の暗がりに隠れていて、皆んな帰った後で、木戸を閉めに出たお菊を殺し、塀を乗越えて逃げ出した筈だ」