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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「昨夜、山之助は外へ出た様子は無いのか」
「主人の金六はヨイ/\で身動きも怪しく、ロレツも廻らず、下の世話まで山之助にさせるので、人でも頼まなきゃ、一と晩でも家をあけられない――とこれは近所の評判ですよ。昨夜も夜半過ぎまで、何彼と介抱をして居たそうで、あんな評判の良い男はありませんね。一季半期の奉公人に出来ない事ですね」
黒雲五人男と、お比奈の兄の山之助との間に、何人か連絡は無いかといった、少しばかりの疑いも、あれでは吹き飛んでしまいます。
しかし、事件はこれが本当の発端でした。兇賊の一団、黒雲五人男の跳梁と、銭形平次の死闘は、これを皮切りに展開されたと言ってもよかったのです。
黒雲五人男の挑戦の第一手段は、
「サァ、大変だ、親分、黒雲五人男は御用の提灯を持って池の端の生薬屋、丸屋吉兵衛のところに押入り、漢方と南蛮物の毒薬を一と箱盗み出して行きました、その中には江戸中の人間を半分は殺せる程の毒が入って居るんだというから大変じゃありませんか」
というのは八五郎の報告でした。
「銭形の親分、近頃お南の奉行所に変な者が出入する様子です。出入商人にも変りは無く、曲者の忍び込んだ様子も無いのに、お奉行所の中でいろ/\変ったことが起ったり、妙な物が紛失します」