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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「それで?」
「私は此処まで飛んで来ました、でもいざとなると、親分に逢って、夢のような話をしたばかりに、後でどんな祟りが来るか、それが怖くなって、お内儀さんの姿が見えなくなると、直ぐ逃げ出してしまいました」
お夏は悩ましそうでした、が、その言葉には、妙に真剣味が籠ります。
「後で知らないと言ったのは?」
「あの家は、何処の壁にも耳があります、うっかりした事を言うと、それを聴かれて、どんな眼に逢わされるかもわかりません」
そう言いながらも、あの冷静そのもののようなお夏が、恐怖やら緊張やらに震えて居るのでした。
「さァ、出かけよう――と言ったところで、その扮じゃ町は歩けまい、お静」
平次は女房を呼んで、お夏の髪形から、身扮まで、ザッと直させながら、何やら深々と考えて居ました。
明神下から平右衛門町まで、女の足では急いでも四半刻はかかります。その間平次と八五郎は、お夏を中に挟んで、何くれとなく話を手繰り出しました。
「いろ/\訊き度いが、今度は隠さずに話してくれるだろうな」
「ええ」
「例えば、お前の身許だ、佐渡屋とはどんな係り合いになって居るんだ」
「私は先々代の姪の子になります」