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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「もう沢山だ、八、俺はもう胸が悪くなったよ」
平次はやけに煙管を叩いて、胸などをさすって見せるのでした。
「もう少し聴いて下さいよ、親分、これからが面白いんで」
「勝手にしやがれ」
「その揚羽のお艶が、今度一枚絵になって売出されたんだから、大したものでしょう」
「素人娘が一枚絵にね」
平次の顔は酢っぱくなるばかりです。「美人崇拝」は昔も今も変りは無く、名ある美人が一枚絵になって売出される例は、随分古くから行われたことですが、それはほとんどことごとく遊女とか茶汲女とか、精々御師匠さん位が止りで、素人の娘が一枚絵になって、絵草紙屋の店頭にブラ下るということは、先ず前例の無いことです。
「素人娘の一枚絵でも、売れ行きは大したもので、吉原の名ある太夫の一枚絵にも負けないだろうという噂で」
「誰がそれを買うんだ」
「岡惚れ筋は皆んな一枚ずつ買いますよ、恋患いの口は、一人で十枚二十枚と引受けるから、それだけでも大変で」
「お前は?」
「ヘッ、ヘッ、一枚買いましたよ」
八五郎はニヤリ/\と小鬢のあたりを掻くのです。
「持って居るのか」
「持って来ようと思いましたがね、枕皺がひどいから止しましたよ」