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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
「あっしも不思議でならねえから、いろいろ訊いて見ると、枕のあがらぬ大病も本当なら、時々夜中に抜け出すのも本当だそうですよ、いやになるじゃありませんか、もっとも横町の奎斎先生に訊くと、――恋患いや貧の病なんてのは、病気じゃないそうですね、その証拠は、恋い焦れている相手に添わせてやると、厚紙を引っぺがすように治るんだって、随分勝手な話じゃありませんか。あっしも話の種に一度位は恋患いてえのをやって見ようと思うが、いけませんね、どんなにあの娘のことを思い詰めても、時分時になると、意地が悪く腹が減って、我慢にも寝ちゃ居られませんよ」
などと、八五郎の脱線振りは際限もありません。
「無駄はいい加減にして、お前の調べはそれっ切りか」
「まだありますよ。尺八吹きの竹童は三輪の親分に縛られましたが、あの男はお月様の良い晩なんか、江島屋の裏へ行って尺八を吹くんだそうですよ――恋慕流し――って言うんですってね、手数のかかった野郎で、尺八で思いのたけなんか吹いたって、相手に通じるわけはありませんよ、面と向って、手っ取り早く惚れたら惚れたと――」
「お前の話を聴いて居ると日が暮れるよ、もう少し先を急げ」