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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens

Aozora Bunko

「伊保木金太郎はお武家で、身分が身分ですから、お艶さんも心引かれて居る様子です。竹童師匠は大したこともありませんが、江島屋の養子の与茂吉も大敵で、私はうかうかしては居られません」「――」

「そこで、考えたのはこの恋患いでございます。力も金も知恵も無い私は、命がけの恋患いでもして、お艶さんに可哀想だと思わせる外は術が無かったのでございます。私は患いました。もう一月も前から床に就いて居りますが、思ったように痩せないのが情けないと思いながら、こればかりはどうすることも出来ません」

嘉三郎は感慨無量な声を振り絞って、平次を相手に掻き口説くのです。

「良い心掛けだよ、『私は患いました』――と聴かされちゃ腹も立たねえ、精々患ってこがれ死をするがよかろう、――両親は蔭で泣いて居るぜ、馬鹿々々しい」

平次は珍らしく激しいことを言って立ち上りました。先刻店口へ迎えて、涙ぐんで倅のことを話して居た父親嘉七のことを考えると、二つ三つ張り倒してやり度くなるほど腹が立ったのです。

江島屋へ帰って来ると、伊保木家の折助が、用人の川村左馬太の手紙を持って来て居りました。開いて見ると、