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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens
おちづは頬ずりをしながら囁いた。
「いっしょに伴れてってくれるわね、半ちゃん」
耳に触れるおちづの熱い息で、半次はそこが焼けるように思った。
「伴れていければいきてえけど、入り鉄砲に出女といって、女が江戸から出るのはやかましいんだぜ」
「あんたに心配はかけないわ、自分のことは自分でやってよ」
「そう安く云ったっておめえ」
半次はぱっととび起きた。
納屋の表の戸があいて、提灯の光りがさし込み、二三人の男が(心張り棒などを持って)どかどかと入って来た。
「誰だ、そこにいるのは誰だ」
半次はおちづを押しやり、
「先へ逃げな」
と囁きざま、藁束を取って、かれらのほうへ投げた。三つ四つ、続けざまに投げつけ、おちづが逃げたのを認めてから、自分も裏のぬけ穴をくぐって、すばやく外へ脱出した。
「泥棒、泥棒だ」
男たちが喚きたてた。
「半ちゃん、こっちよ」
おちづは河岸に立っていた。半次は黙って、おちづに手を振り、いっさんに将監橋のほうへ駆けだした。
「待ってよ、ねえ待って」
おちづがうしろから走りながら云った。
「そんなに早く駆けないでよ、半ちゃん、こっちの路地へ入ればいいじゃないの」