Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens
四
彼は上のほうを指さした。
四
「あらほんと、またあの雀だわ」
おちづも明るい声で叫んだ。
半次の指さした木の枝に、小さな一羽の赤い雀がとまっていた。翼も躯も肢も、ぜんたいが鮮やかに赤いのである。普通の雀よりはずっと小さいが、鳴き声やかたちは明らかに雀だった。
「増上寺の山内にいたのと同じやつかな、山内からこんな処まで飛んで来れるかな」
「そのくらい飛べなくってどうするのさ」
「おめえ知ってるのか」
二人は子供に返っていた。それまでのおとなびた対話から、いっぺんに子供の世界へ戻った。かれらの言葉によれば、おちづは洪水で母と弟を失い、半次は火事で両親と死別したという。二人の孤児は、世間の荒い波のなかで、二枚の枯葉が流れ寄るように、どこかで出会ったまま「伴れ」になったのであろう。お互いが孤児であると同時に頼る家も人もない。そういう似かよった境遇も、かれらをむすびつける強い絆になっているようだ。冬木河岸での喧嘩のやりかたや、おちづのませた態度には、世間の冷たい風にもまれて、しぜんと身につけた反抗心や、すでに半ばおとなの世界の辛辣さをもっている。――けれども、それは生きてゆくためのやむを得ない武装であって、ひと皮剥けば、躯にも心にも汚れないままの「少年?」