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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens
十二
「世の中にはじつに、妙な人間がいるもんだ」
万三郎は兄の顔を見た。
休之助は顔をそむけ、
「伝次たちのようすをみよう」
と云って、斧田といっしょに、負傷者をしらべに戻っていった。
万三郎は、はね飛んだ石黒の直刀を捜し、それを持って来て、彼の側へ跼み、その肩へ手をやった。
「さあ、刀を此処へ置きます、お願いですから江戸へ帰って下さい、なまいきなことを云うようですが、人間は死ぬまでが修業でございましょう、貴方はちょっと脇道へそれただけで、元の道へお戻りになればいいのです。そのくらいの勇気がおありにならないとは信じられません、どうか勇気をおだしになって下さい、私はいつか、無神流師範としての石黒先生にお会いできるものと信じています」
そして、彼は休之助のほうへ去った。
伝次は無事だった。が、なかまのうち五人が死に、十三人が負傷した。秀もはね飛ばされて片足を折り、伝次たちに助けられて、他の負傷者といっしょに、木戸口の外に退避していた。
貯蔵所の者たちは死者十余人、負傷者も同じくらいあったが、その他はすべて逃げ去った。躯が満足で残っている者は一人もなかった。幸い番士小屋と糧秣庫が焼けなかったし、番士小屋には医療品があったので、敵味方の差別なく、負傷者を小屋へ運んで、みんなで応急の手当にかかった。