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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens

Aozora Bunko

三

「――ありません」

「おちづは女ながら、二人のゆくすえについて、これだけ考えておる、男のおまえがなんの望みもないで済むのか」

唇をぎゅっとひき緊め、かたくなに頭を垂れたまま、半次は石のように黙っていた。

「――答えなければ答えなくともよい」

徹之助は始末に困ったとみえ、

「いずれ改めて話すとして、暫く気を鎮めておれ」

そう云って二人をさがらせた。

沢野雄之助を呼んで、おちづを深川まで送り届けるように命じ、また斧田又平に、半次を向島の青山家下屋敷へ伴れてゆかせた。

そこで又平と共に、かよの監視をしながら、おちついて身のふり方を考えさせるつもりだったのである。半次は終始無言で、又平と共に出ていった。

おちづと半次を出してやるとまもなく、――紀伊家の小田原河岸の屋敷から、和泉屋の娘の八重が来た。

徹之助の妻子を脱出させるために、まえから打合せていた機会が近づいたので、その念を押しかたがた、重要な情報を持って来たのであった。

妻子の脱出は舟でやる手筈であった。

その下屋敷は小田原町の地端れにあり、一方は堀、一方は海になっている。海手には邸内へ出入りする水門があるが、これは常時、見張りが厳しいので、とうてい望みはない。