Japanese reading practice

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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens

Aozora Bunko

「三郎、おまえはいいから、先に首尾を知らせに帰れ」

休之助が万三郎に云った。

「だって手が足りないでしょう」

「どうせ素人の手には負えやしない、伝次を医者の迎えにやって、おれたちはできるだけ早く江戸へゆく工夫をするんだ」

「しかし休さんはどこか怪我をしているんでしょう、知らせに帰るんなら休さんが」

「おれの云うとおりにしろ」

休之助が云った。

「おれは頭を打ってちょっと気を失っただけだ、おれのことを心配するより、自分がよけいなことをしないように気をつけるがいい」

「そのとおりでしょう多分、いやいいです、帰りますよ」

万三郎は伝次たちに労を謝して、観音谷から去った。

焼け落ちた建物はまだ赤々とくすぶり、谷は煙に閉ざされていた。石黒半兵衛はもう元の処にはいなかった。忠告を容れて立退いたものかどうか、――煙に閉ざされた谷を見かえりながら、万三郎はそっと口の中で呟いた。

「これでこの谷は、元の静寂にかえるだろう、こんな貯蔵所が造られたことも、この一夜の死を賭した争闘も、やがて時に押し流されて消えてしまい、あとにはただ叢林が茂るに違いない、人間のすることなんて、はかないものだ」