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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
Read 風流太平記 (ふうりゅうたいへいき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 244,473 characters · 487 screens
「あんた知らないのよ、半ちゃん、深川っ子の喧嘩って凄いのよ、あたし本所の二つ目で生れたから知ってるけど、芝のほうと違って物を使うの、きまって大けがをするんだから、ほんとなのよ半ちゃん」
「おめえどうしておいらを跟けまわすんだ」
半次はべつのことを云った。
「おらあおめえなんか嫌えだよ、女なんか、おいら大嫌えだ、ついて来るなよ」
「そんなに怒らないでよ」
おちづは哀しげに云った。
「あんたも一人ぼっちだし、あたしも一人ぼっちじゃないの、あんたはふた親を火事で取られたし、あたしはおっ母さんと弟を大水で取られたわ」
「なん十遍同じことを云うんだ」
「三年まえの大水で、おっ母さんと弟を取られたのよ、弟は半ちゃんと同い年で、生きてればもう十三だわ、あんたを見ていると、あたし弟の金坊のような気がしてくるの、どうしても弟のような気がしてしようがないのよ、半ちゃん」
半次はまっすぐに歩いていた。
井伊家の下屋敷へゆくには、もっとまえに道を曲らなくてはいけなかった。下屋敷は蛤町にあった。しかし半次は河岸っぷちをまっすぐに、亀久橋を渡って、しげもり稲荷のほうまで歩いていった。
おちづはくどき続けた。