Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
自分の世界が急に寂しくなったようにも感じた。しかし離れているときに考えていたほど、自分がまだあの男のことを考えているとは思えなかった。今のあの男とは全く懸はなれたその頃の山の思出が、微かに懐しく思出せるだけであった。あの時分の若い痴呆な恋が、いつの間にか、水に溶されて行く紅の色か何ぞのように薄く入染んでいるきりであった。
自分の若い職人が一人、順吉というお島の可愛がって目をかけている小僧と一緒に、熱い仕事場の瓦斯の傍を離れて、涼しい夜風を吸いに出ているのに、ふと観月橋の袂のところで出会した。
「どうしたえ、田舎のお爺さんは」お島は順吉に訊ねた。
二人はにやにや笑っていた。
「今夜も酔っぱらっているんだろう」
「ええ何だかやっぱり外で飲んで来たようでしたよ」
お島はこの順吉から、父親が自分の嫁振を蔭で非して、不平を言っていることなどを、ちょいちょい耳にしていたが、それはその時で、聴流しているのであった。
「私のこったもの、どうせ好くは言われないさ。あの田舎ものにこの上さんの気前なんかわかるものかね」
お島はそう云って笑っていたが、新しく入って来たものから、世間普通の嫁と一つに見られているのが、侮辱のように感ぜられて腹立しかった。