Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
六十六
お島はのっそりした無口の彼を前において、時々遠慮のない口を利いた。
「むむ」小野田はただ笑っているきりであった。
「だけどお前さんは洋服屋さんのようじゃない。よくそんな風をしたお役人があるじゃないか」
しなくなした前垂がけの鶴さんや、蝋細工のように唯美しいだけの浜屋の若主人に物足りなかったお島の心が、小野田のそうした風采に段々惹着けられて行った。
「工場から引っこぬいて、これを自分の手で男にしてみよう」
薄野呂か何ぞのような眠たげな顔をして、いつ話のはずむと云うこともない小野田と親しくなるにつれて、不思議な意地と愛着とがお島に起って来た。
「洋服屋も好い商売だが、やっぱり資本がなくちゃ駄目だよ。金の寝る商売だからね」小野田はお島に話した。
「資本があってする商売なら、何だって出来るさ。だけれど、些とした店で、どのくらいかかるのさ」
「店によりきりさ。表通りへでも出ようと云うには、生やさしい金じゃとても駄目だね」
六十六
芝の方で、適当な或小い家が見つかって、そこで小野田と二人で、お島がこれこそと見込んだ商売に取着きはじめたのは、十二月も余程押迫って来てからであった。