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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme

Aozora Bunko

百十一

「けどこれだけはあの人には秘密ですよ」

百十一

博覧会時分に上京して来た、山の人たちに威張って逢えるだけの身のまわりを拵えて、お島があわただしい思いで上野から出発したのは、六月の初めであった。

四五年前に、兄に唆かされて行った頃の暗い悲しい心持などは、今度の旅行には見られなかったが、秘密な歓楽の果をでも偸みに行くような不安が、汽車に乗ってからも、時々彼女の頭脳を曇らした。

汽車の通って行く平野のどこを眺めても、昔しの記憶は浮ばなかった。大宮だとか高崎だとかいうような、大きなステーションへ入るごとに、彼女は窓から首を出して、四下を眺めていたが、しばらく東京を離れたことのない彼女には、どこも初めてのように印象が新しかった。高崎では、そこから岐れて伊香保へでも行くらしい男女の楽しい旅の明い姿の幾組かが、彼女の目についた。蓄音器をさげて父親を悦ばせに行った小野田が思出された。不恰好な洋服を着たり、自転車に乗ったりして、一年中働いている自分が、都て見くびっているつもりの男のために、好い工合に駆使されているのだとさえしか思われなかった。

「わたしは莫迦だね。浜屋に逢いに行くのにさえ、こんなに気兼をしなくてはならない。