Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
それにお島は今月へ入ってからも、毎時のその時分になっても、まだ先月から自分一人の胸に疑問になっている月のものを見なかった。そうして漸とそれを言出すことのできたのは、鶴さんが気忙しそうに旅行の支度を調えてからの昨夜であった。
「私何だか体の様子が可笑いんですよ。きっとそうだろうと思うの」一度床へついたお島は、厠へいって帰って来ると、漸とうとうとと眠りかけようとしている良人の枕頭に坐りながら言った。蒸暑い夏の夜は、まだ十時を打ったばかりの宵の口で、表はまだぞろぞろ往来の人の跫音がしていた。朝の早い鶴さんは、いつも夜が早かった。
「そいつぁ些と早いな。怪しいもんだぜ」などと、鶴さんは節の暢々した白い手をのばして、莨盆を引寄せながら、お島の顔を見あげた。鶴さんはその頃、お島の籍を入れるために、彼女の戸籍を見る機会を得たのであったが、戸籍のうえでは、お島は一度作太郎と結婚している体であった。それを知ったときには鶴さんは欺かれたとばかり思込んで、お島を突返そうと決心した。しかし鶴さんはその当座誰にもそれを言出す勇気を欠いていた。そしてお島だけには、ちょいちょい当擦や厭味を言ったりして漸と鬱憤をもらしていたが、どうかすると、得意まわりをして帰る彼の顔に、酒気が残っていたりした。