Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme

Aozora Bunko

「この水で、お銀は道を留められた、それで帰られないのじゃ、してみれば……」

と竜之助は、はじめてお銀様のことを思いやりました。

外の騒ぎはますます大きくなって、気のせいか、轟々として水の鳴り動く音さえ聞えて来るのであります。竜之助は刀をそこへ置いて立ち、障子をあけて縁側へ出て、雨戸を少しばかりあけて外を見ました。外を見たところで、この人の眼には内と同じことに、真暗な闇のほかに何も見えるのではありません。

しかしながら、外はドードーと雨が降っています。風はあまりないようでありましたけれど、どこかの山奥で、海嘯のような音が聞えないではありません。その近いあたりは、なんでも一面の大湖のように水が張りきってしまったらしく、その間を高張提灯や炬火が右往左往に飛んでいるのは、さながら戦場のような光景でありました。その戦場のような光景はながめることはできないながら、その罵り合う声は、明瞭に竜之助の耳まで響いて来るのであります。

その騒がしい声と、穏かならぬ光景とを聞いたり想像したりしてみても、空しく気を揉むばかりであります。

竜之助は雨戸を立て切って、また前のところへ帰りました。