Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
二
ます。
二
一夜のうちに笛吹川の沿岸は海になってしまいました。家も流れる、大木も流れる、材木や家財道具までも濁流の中に漂うて流れて行くうちに、夜が明けました。
人畜にどのくらいの被害があったかはまだわかりません。救助や焚出しで両岸の村々は、ひきつづいて戦場のような有様であります。
恵林寺の慢心和尚は、法衣の袖を高く絡げて自身真先に出馬して、大小の雲水を指揮して、百姓や見舞人やを叱り飛ばして、丸い頭から湯気を立てています。
雲水どもは土地の百姓たちと力を併せて、濁流の岸へ沈枠を入れたり、川倉を築いたり、火の出るような働きです。ここの手を切られると、水は忽ち日下部や塩山一帯に溢れ出す。ここの手だけは死力を尽しても防がなければならない。すでに日頃から堅固な堤防があって、昨夜来の不眠の警戒でしたけれども、水の破壊力は、人間の抵抗力を愚弄するもののようでありました。枠を沈めると浮き出し、木牛を入れると泳ぎ出し、築いた川倉が見る間に流されて行き、あとからあとから土俵を運んだり石を転がしたり、無用にひとしい労力を昨夜から寝ずにつづけているのでありました。和尚が雲水を叱りとばしているその傍には、珍らしやムク犬がその侍者でもあるかのように神妙に控えています。