Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
夜食の器を入れて返す。下はせまいから邪魔でならぬ。おい釣瓶を降ろせ」
空井戸とみえる。水も見えぬ、星も見えぬ。
われを忘れて、又四郎は、その中へ身を屈した。そして、洞然たる暗闇の底から面をなでて来る人間のにおいを嗅いだ。
「江橋っ」
「……?」
「林助え、林助か?」
「……だ、だれだ」
「わしだ。人見又四郎だ」
「えっ……?」
「そこは、空井戸か」
「そうだ」
「ずっと、そこにいたのか」
「夜も昼も」
「待て、いま、釣瓶を降ろしてやる。上がって来い」
いいながら、背を起そうとしたとたんであった。うしろへ這い寄っていた二人の番の者が、かれの足を掬った。又四郎の足は、宙の美男葛を蹴って、井戸のなかへ身を逆さまに堕ちて行った。
地の底には、一息のうめき声のほか、何も聞えなかったが、地上はそれからの一刻を、あわただしい人声や跫音に更けていた。
春雷
一
年毎の梅はことしも恙なく咲きみちている。日々是好日、西山荘の無事な門にも、きのう今日、人の足が繁くなった。
そのほとんどが、近村の農民であった。孫に手をひかれた老人もあれば、子を負いながら片手に馬を曳いて来る百姓の女房もある。そして、そのすべてのものが、かならず自製か自産の何物かを携えて、