Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
深沈とふけゆく座敷のうちに、こう湿ッぽい密々話。ハテナ? ハテナ? なんだかどこかで、聞いたことのある声だぞと、亀の子のように、のこのこと蒲団の中から首をもたげだしたのは、独楽をもらったうれしさに昂奮して、つい寝つかれずにいた泣き虫の蛾次郎。
こういうことに出ッ会すと、がんらい、ジッとしていられない性分。よせばいいのに、ソロリ、ソロリと四ツン這いにはいだして、つぎの部屋の向こうがわの、線香のようにスーと明かりの立っているところを目あてに、
「だれだろう? そばできくと、よけいに聞きおぼえのある声だが……」
と、細目にすかして、烏天狗の仮面をつけたまま息を殺してさしのぞいた。
二
見てびっくりするくらいなら、のぞかなければいいものを、襖のすきへ仮面をつけたとたんに、
「あッ! こいツアいけねえ」
と仰天して、蛾次郎みずから、そこにじぶんのいることを、となりの武士に知らしてしまった。
草木のそよぎにも心をおくという、落武者の境遇にある者が、なんでそれを気づかずにいよう。
イヤ、当の蛾次郎よりははるかに胆をひやしたかもしれない。
「ヤ、だれか、となりへ!」
太刀をつかんでパッと立った。