Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
わたしに、それだけは、はっきりわかります」
「…………」
伸子は、そろそろ椅子から立った。
「失礼ですけれど、わたし、もう行かなければならないから……」
もう思いきったという風に、千種とよばれる青年も長椅子から立った。
「その辺まで御一緒しましょうか」
「……仕度いたしますから、どうぞおさきに」
玄関で外套へ腕をとおしながら、千種は、
「日本じゃ、また大分共産党の大物がやられているらしいですね」
と云った。
「そうらしいことね」
ロンドンにいたとき、国際新聞通信のそういう記事が伸子の目にはいっていた。それには内容のこまかいことは報じられていなかった。
いまの伸子は、この千種とよばれる男に早く出て行ってもらいたいばかりだった。
「とうとう佐野学もやられたらしいですね」
それをきいて、伸子は、同じ緊張のない調子で、
「そうお」
というのに、意識した努力を必要とした。
「じゃ失敬します」
「さようなら」
出てゆく千種のうしろに玄関の厚いドアをぴっちりしめると、伸子は、そこに立ったまま、羽ぶるいする鳥のように大きく両腕をふって、
「あ!」
と、息をつく声を立てながら、自分の両脇腹へ、おろした両腕をうちつけた。