Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
十五
さっき、山上元の部屋でその話が出たとき、あまりの思いがけなさとうれしさで動顛した伸子のどこかで、その同じ瞬間に意識されたあのつよいわからなさ。そのわからなさは、トゥウェルスカヤを歩いて来る伸子の感動が大きくなればなるほど、やはり同じ量でひろがって来るのだった。
通行人がいくたりか、けげんそうな眼ざしで、伸子を見た。伸子は考えにとらわれて我を忘れ、おそい午後の大通りを足早にすぎてゆく人群れにまじって、たったひとり、のろのろとみんなに追いこされながら歩いて来た。
半ば無意識にホテル・パッサージの入口のドアを押した伸子は、リュックスを出てからトゥウェルスカヤを歩いて来た、そのままの歩きつきで、自分たちの部屋へ戻って行った。
素子が、すばやく自分のデスクの前からふり向いた。
「どうした、ぶこ」
「ただいま」
「どうした」
「うん」
伸子はベレーをぬぎながら、自分のベッドの上に腰をおろした。素子は、ふだんとは全く別人のように何かに心をとられ、ぼっとしている伸子をじっと見た。そして心配と不快さのいりまじった声でとがめるように云った。
「何か云われてきたんだろう」
伸子がだまっている前へ来て立った。