Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
四
数年前、ウィーンで自殺した日本のピアニスト川辺みさ子の、自殺するまでにつめられて行ったせつない心のいきさつが、彼女の名も忘られはてた今、ウィーンに来た伸子に思いやられるようになった。
四
川辺みさ子は、伸子が十ばかりのときから五年ほどピアノをならったピアニストだった。ある早春の晩、肩あげの目だつ友禅の被布をきた伸子が父の泰造につれられて、はじめて川辺みさ子の家を訪ねたとき、門の中で犬が吠え、伸子たちが来たのでぱっと電燈のついた西洋間に、黒塗のピアノが一台、茶色のピアノが一台、並んでおいてあった。川辺みさ子は、その春、上野の音楽学校を首席で卒業したばかりの若いピアニストだった。細面の、瞳の澄んだ顔は、うち側からいつも何かの光にてらし出されているように美しく燃えていた。少女の心にさえ特別な美しさがはっきりと感じとられるその川辺みさ子がひどい跛であることが、伸子を厳粛にした。弟の和一郎の小児麻痺をして左の足くびの腱に故障があった。赤坊のときから家じゅうの関心がそこに集められていて、和一郎が四つの春、はじめて乙女椿の花の咲いている庭を一人だちで歩いたとき、二歳の姉娘である伸子は母の多計代より先によろこんで泣きだした。