Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子は、お愛想ばかりでなく、
「すばらしい眺めですこと!」
と、その部屋をほめた。
「この室は、ほんとの贅沢部屋です」
伸子と蜂谷とをドアのところへ送り出しながら主婦は人をそらさない調子で、
「わたしどもも、この室の眺めは、ほんとに愛しているんです」
と云った。この景色があるばかりで、彼女のもっているこの一室はどんなにねうちがあるかということへ満足をこめて。
往来へ出ると、伸子は笑って蜂谷良作に云った。
「あのマダム、まるで金の玉子を生む牝鶏のことでもいうように、あの部屋の景色のことを云ったわね」
「ハハハハ。金の玉子をうむ牝鶏か。なるほどね、彼女にとってみれば、そうにちがいないわけだ」
蜂谷良作と伸子は、ペレールへ向って歩きながら、途中で休んだ。
「この辺でさがすとなると、どうしても、あんな風な部屋になってしまうんだな」
「ひまつぶしをおさせして、ごめんなさい」
「暇なんだから、一向かまいませんよ。僕も興味がなくもない」
いやがらないで蜂谷が時間をさいてくれただけに、伸子は彼にだらだらと部屋さがしをてつだって貰うことは、押しつけがましいと思った。男のひとが若い女に示す好意に甘えて、何かをたのむというような習慣を伸子はもっていないのだった。