Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

「わたしたちは、あなたの伝統に敬意を表しましょう。このマドモアゼルは、主に英語を話しますから」

「そうです、そうです、ムシュウ」

年よりの角顔に、安心したような、気のいい微笑が浮んだ。

「さようなら、マドモアゼル」

老人は、子供の時分から見なれて年月を経た大木をいつか愛しているように、自分の下宿の伝統を愛しているのだった。

その日、伸子と蜂谷良作は、もうひとところの貸室を見た。セイヌ河のむこうにあるアトリエだった。古い寂しい横丁に面した一つの石門をはいると、そのすぐ右手に住みすてられたようなアトリエがたっていた。趣味のある大きい鉄の蝶番つきの小扉をあけると、そこがもう煉瓦じきのアトリエの内部だった。なかくぼに踏みへらされた煉瓦の床に窓からの日かげが流れていて、高いガラス張りの天井から落ちる光線が、うっすり埃をかぶった中二階の手すりや、その辺のがんじょうな木組みを見せている。いつ舞いこんだか、床にマロニエの枯葉がころがっている。

それは荒廃したアトリエだった。ほんとに仕事をする場所としては、もう役に立たないところかもしれなかったが、伸子の目にうつる廃屋めいた風情は、空想をそそった。