Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
沈黙の裡に時々トランプの投げられる音がしている。
伸子が不意に、
「わたし、今夜ここへ泊ってみたい」
と云った。蜂谷良作は、急にどこかを小突かれたように目をあげて伸子を見た。
「一つぐらい、あいた部屋あるでしょう?」
伸子は、今夜の異様に苦しく、反抗にかりたてられるような激情をそのまま、沈黙のヴェルダンに過してみたかった。眠れない夜ならば、その眠れないひと夜というものを、ヴェルダンで経験してみたいのだった。
「――ここへ泊るって――」
そういう蜂谷の額の上に、ぼんやりした混乱のあらわれているのに伸子の視線がひかれた。
「あなたは、お帰りになって下すっていいのよ、もちろん」
ながいこと黙っていて、蜂谷良作は決論するように、
「きょうは帰りましょう」
と云った。――きょうは? このヴェルダンへ二度来ることは考えられない。
「帰りましょう」
一層決論をつよめるように蜂谷はくりかえした。
「――帰った方がいい」
「ベルネのうちのひとたちに対して?」
その心づかいなら、今夜クラマールへ帰ってから、蜂谷がちょっとベルネの家へまわって伸子が泊ることを知らせてくれたらそれでいいと、伸子は考えているのだった。