Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
その食堂の煖炉棚の上には、泰造の秘蔵しているギリシアの壺が飾られていた。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ立って来るについて伸子が駒沢の家をたたんで数日動坂で暮した間、その煖炉のギリシア壺のよこに大きなキルクが一つのっていた。毎朝掃除がされているのに、何かのはずみで一旦その場ちがいなところへのったキルクは、何日間も煖炉棚の上でギリシア壺のわきにあった。そして、もう今ごろそれはなくなっているだろう。いつの間にか見えなくなった、という片づきかたでキルクは煖炉棚の上からなくなり、その行方について知っているものはもう誰もいないのだ。
こういうけたはずれのところは主婦である多計代の気質から来た。もし多計代が隅から隅までゆきとどいて自分の豪華趣味で統一したり、泰造の古美術ごのみで統一されたりしていたら、動坂の家というところはどんなに厭な、人間の自由に伸びるすきのない家になっただろう。伸子は、動坂の家に、せめてもそういう乱脈があることをよろこんだ。少女時代を思い出すと、そういうよそからは想像も出来ないようなすき間が動坂の家にあったからこそ伸子は、いつかその間にこぼれて伸びることもできた野生の芽として自分の少女時代を思い出すことができた。