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Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああそうか、その布は、そこへ行くわけか」

とひとりごとを云いながら、伸子の手もとを眺めていた川瀬は、ふと、あたりまえの話し声で、

「おやじさんが、是非また会いたいそうだぜ」

と云った。

伸子は、顔をあげて川瀬をみ、ひどく当惑した表情をした。メーデーの前に山上元のところへ訪ねて行ったことは、素子に話してなかったのだった。困った伸子の顔つきを見て、川瀬は、

「そうだったのか、失敬した」

しかしそのまま、やはりあたり前の声でつづけた。

「きょうの三時に来てくれっていうことだ」

「ふーん」

素子が、不快そうな口元の表情で、タバコの煙をはいた。

「そういうことだったのか」

「失敬した。僕は、どっちも知っていることなのかと思ったもんだから」

「わたしは何にも知らないよ。しかし君の関係したことじゃない」

この場は気をとり直そうとする声の調子で、

「まあいいさ。――どっちみち、わたしの用じゃないんだから。――こっちの方をきめようじゃありませんか」

結局、川瀬はルバーシカを伸子たちからの祝いとしてうけとった。

「貰い立ちしてもいいかい?」

立つ前に、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)でまだすましておかなければならない用事があるからと、川瀬は、それから三十分もいないで、伸子たちの室を去って行った。