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Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

猿にでも物をやるように、投げてやる。それができにくかった。

去年の夏、レーニングラードのパンシオン・ソモロフにいたとき、同じ宿に重い心臓病の元看護婦長ペラーゲア・スチェパーノヴァという女がとまっていた。青ぶくれて、ときによると夜眠れないほど息苦しい大柄のペラーゲア・スチェパーノヴァは、幾日もつづけて自分の部屋から出て来られないことが多かった。ある日、彼女がめずらしく正餐に列席した。同じ食卓についていた高級技師の細君であるリザ・フョードロヴナがそのときペラーゲアの病気に同情をしめして、部屋にとじこもっていなければならないのは退屈なものだ、と云った。すると、ペラーゲア・スチェパーノヴァは、蒼くむくんだ顔の上で薄い眉毛をもち上げるような表情になりながら、

「たまったものじゃありません」

と云った。

「わたしは、窓から子供たちに菓子を投げてやるんです」

わきできいていた素子や伸子に、すぐにはその意味がのみこめなかったほど、ペラーゲア・スチェパーノヴァの云いかたには、愛情もやさしみもなかった。投げてやる菓子そのものへの軽蔑があるかのような調子だった。伸子はそのときおどろいて素子に云った。