Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
四十歳と五十歳との間ぐらいに見えるそのがっしりした肩幅の婦人は、瀬川や伸子たちが厚いカーペットの上を音なく歩いて、そのデスクから五六歩のところへ来るまで、手にもっている書類から視線をあげなかった。
「こんにちは。お忙しいところを暫くお邪魔いたします」
いんぎんな瀬川の言葉で、その婦人は書類から目をあげた。
「こんにちは」
そして、椅子から立ち上って、伸子たちに向って、辛うじて笑顔らしいものを向けた。伸子には、彼女のその第一印象がほんとに異様だった。男きょうだいのトロツキーにそっくりの重たくかくばった下顎をもっているカーメネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)夫人は、じっと三白の眼で対手を見つめながら、奥歯をかみしめたまま努めて顔の上にあらわしているような笑顔をしたのであった。伸子は若い女らしく、ぼんやりした畏怖をその表情から感じた。
瀬川雅夫は、夫人のそういう表情にももう馴れているとみえて、格別こだわったところもない風で彼女に丁重に握手し、それから伸子、素子を紹介した。夫人は、
「お目にかかって大変うれしゅうございます」
と云ったきりだった。最近の観光小旅行について瀬川がいかにも大学教授らしい長い文章で礼をのべ、それから立って壁ぎわの椅子においてあった風呂敷づつみをといて、大事にもって来た二尺足らずの箱を運んで