Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

そんな学者になってしまった保を想像すると、伸子は保の一生と自分の生涯とを繋ぐどんな心のよりどころも失われてしまうように思った。

「あのひとに必要なのは、思いきって社会的にあのひとを突き出してくれる学科だのに」

「経済でもやればいいのさ、いっそのこと。――さもなければ、哲学だって、ここの国でやってるような方法で哲学をやりゃいいのさ。それなら、生きていることはたしかだもの」

でも保は、保のこのみで、あらゆる現実から絶対に影響されない純粋な真理を求めようとしている。そのことは伸子にわかりすぎるほどわかっていた。それは人間と自然の諸関係のおどろくべき動きそのものにわけ入って、その動きを肯定し、動きの法則を見出そうとする唯物弁証法の方向とはちがった。保は、何かの折唯物という言葉にさえ反撥したのを、伸子は覚えていた。利己という字につづいた物質的というような意味に感じて。

しばらく言葉をとぎらせて伸子と素子とがうすら明りの街を見下している午前二時のバルコニーへ、遠くから一つ馬の蹄の音がきこえて来た。その蹄の音は、伸子たちのバルコニーが面している中央美術館通りから響いて来た。