Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「じゃ、佐内さんは、タクシードでも着ていらしたの?」
「そうじゃありませんでしたがね」
「見物のたちは、服装の問題じゃありませんよ」
専門のロシア語のほか、伝来の家の芸で笛の名手である瀬川は、自分の舞台経験から云った。
「舞台に、しらずしらず活を入れて来るような観客がいい見物というもんですよ」
「時代の推移というか、年齢の推移というか、考えると一種の感慨がありますね。佐内君が左団次と自由劇場をやったのが一九〇九年。まだ二十五六で、私と少ししかちがわなかったんですが、第一回の公演のとき、舞台から挨拶をしましてね、三階の客を尊重するような意味のことを云ったんです。――三階の客と云ったって、今から思えば小市民層で、主に学生だったんですがね。すると、それが自然主義作家たちからえらく批判されましてね、きざだと云われたんです」
瀬川が、
「そう云えば、このあいだ芸術座の事務所でスタニスラフスキーと会ったとき、佐内さんの話しかたは、幾分にげていましたね」
と云った。
「佐内君は、芸術座の技術の点だけをほめていたですね」
素子は、注意して話に耳を傾けていたが、また一本、吸口の長いロシアタバコに新しく火をつけながら、きいた。