Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女はカラーに黒い毛皮のついた紫色の外套を着て、黒い目立たない帽子をかぶっている。

「これでお気に入りましたか?」

いそぎ足に伸子のベッドのわきへよって来て、

「さようなら、おやすみなさい」

右手で伸子のかけものを直しながら、婚約指環をはめた方の手で伸子の手をにぎってふった。

「看護婦が個人のなりで病室へ入ることは禁じられているんです――さようなら」

ミス・ジョーンズはすぐドアのそとへ消えた。

――年をへだてて二月の雪明りが室内にあふれるモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の病院で、あのときのミス・ジョーンズのダイアモンドの婚約指環や彼女が紫色外套を着てこっそり入って来たときの正直にせかついた顔つきを思い出している伸子の心は、それからあとにつづいておのずと思いおこされて来た記憶に一種の抵抗を感じた。そうやって毎夜七時に、ミス・ジョーンズが伸子のために夜の身じまいをして帰って行くと、やがて八時頃、伸子の病室のドアが間をおいて重くノックされた。佃が入って来るのだった。佃の下顎の骨格の大きくたっぷりした、青白い筋肉の柔軟な顔がまざまざと伸子の思い出に浮んだ。