Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子は見舞に行った。ピアノのおいてある、そこで伸子が教則本をひきはじめた洋間に、手軽なベッドをおいて、川辺みさ子は、伸子がその部屋に入って行ったときは、うしろのカーテンをひいて、ほの暗くしたなかに横たわっていた。
「おお、伸子はん!」
川辺みさ子は、おお! という外国風な叫びと京都弁とをまぜて、ベッドの上におき直った。
「よう来てくれました!」
つよくつよく伸子の手をとって握りしめた。
「これからやりますよ、わたしは生れかわったのやもの! なあ、そうやろう?」
伸子が口をさしはさむ間を与えず、川辺みさ子は話しつづけた。伸子は、暫く話をきいているうちに、せつなくて体から汗がにじみ出した。川辺みさ子は、脳のどこかに負傷の影響を蒙ったと思わずにいられなかった。早口に、だまっていられないように勢づいて話す川辺みさ子の言葉は、明瞭をかいていた。そして、これからの自分こそほんとの天才を発揮するのだとくりかえし川辺みさ子が云うとき、伸子は滲み出た血がこったような涙を目の中に浮べた。それをきくのはこわかった。そして、いやだった。天才! 伸子がそのひとことでおぞけをふるうには、深いわけがあった。