Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「こりゃ、黒川君のまけだね」
面白そうに、わきから素子が云った。
「ロシアじゃね、黒川君、労働者住宅は労働者がそこに住むために建てられているんで、外国人に見せたり、エハガキにしたりするために建てているんじゃないんですよ」
「まあ、見ていらっしゃい」
深い確信に貫かれているように黒川が反駁した。
「いまにロシアの労働者も、ここみたいにエハガキでも何でも自由にこしらえられるようになって御覧なさい。きっと、売るようになるんだから。――人情なんてものは、国によってそうそうちがうものじゃないんです」
「変だわ、黒川さんの話は。みんな逆なんだもの――」
もうこれひとことだけ、という顔つきで素子を見ながら伸子が云った。
「ロシアの労働者が、何でも自由にこしらえられるようになった時こそ、あの人たちはなおエハガキなんか売る必要のない生活をもつようになるのに――」
ウィーン出発をひかえて、それまでにすまさなければならない用事はみんなすみ、伸子たちにとってその日の用事は、このカール・マルクス館を見るだけだった。ここをいそいできりあげて、うららかな午後ののこりの時間をどうすごす計画もなかった。