Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
ニューヨークじゅうの幾百というサイレンが、あのときは一時に音の林を天へ吹きつけた。ウォール街を株式取引所の横道へかつがれて来たカイゼルの藁人形に火がつけられ、その煙が流れる往来でニューヨーク市民は洪水のような人出によろけながら笑って、叫んで、紙ぎれをぶつけあって、見も知らない男女がだきあって踊った。夜じゅう眠らないでニューヨークの下町に溢れた群集は、どの顔も異様な興奮で伸子にとってはみにくくおそろしかった。征服欲の満足と歓喜で野蛮になっている群集の相貌というものを、伸子はそのときはじめて見たのだった。それからひきつづき伸子は心のうちに深い疑問をめざまされたものの目色で、次第に虹の色をあせさせながら実利の冷たさにかたまってゆく人道主義的な標語と、ニューヨーク・タイムズにあらわれる兇猛な辻強盗の増加と、ヨーロッパから着く船ごとにエリス・アイランド(移民検疫所)へおくられるおびただしい戦争花嫁と戦争赤坊の写真を見たのだった。伸子が痛感したのは、世界大戦について最も厳粛な感想をもっているのは、必ずしも平和克復という舞台の上でいそがしくしゃべっている人々ではないということだった。