Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
――両親は、非常に金持でした。大きな金持の商人でした」
ドーリヤは、それをロシア語で、ゆっくり、重々しく云った。秋山が暗示的に、伸子に向って補足した。
「ドーリヤさんの両親は、シベリアの方に生活しているらしいですよ。――そうでしたね?」
「そうです、そうです」
ドーリヤは、シベリアという言葉に幾度も頷ずきながら、濃く紅をつけた唇の両隅を、救いようのない困惑の表情でひき下げながら、下唇をつき出すような顔をした。伸子にもおぼろげに察しられた。ドーリヤの親は何か経済攪乱の事件にひっかかっているのだ。
「ドーリヤさんは、どこで、そんなに日本語が上手になったの?」
やがて、すっかり話題をかえて伸子がきいた。箱根細工から思いがけない物思いにひきこまれかかっていたドーリヤには、伸子の日本語がききとれなかった。内海が先生のように几帳面な口調で通訳した。
「おお、サッサさん、あなた、ほんとに、わたしの日本語上手と思いますか?」
ドーリヤ自身、そのきっかけにすがりつくようにして、もとの陽気さに戻ろうとした。
「思います」
「ほんとに、うれしいです」
その声に真実がこもっていた。